良い医師

2018年5月21日

良い医者とはどんな医者?

 

良い医者とひとくちに言いますが、「良い医者」とはなかなか容易ではありません。

例えば、とても親切でも医業の水準が高くなかったりする場合に、それを良い医者と言えるのかというと難しいです。

逆もあります。

外科系の医師は、やはり技術があってなんぼのものですから、たとえ無愛想で、性格的に好ましくなくても、手術の腕が無上のものならば、その病気で困っている方にとっては間違いなく良い医者と言えるでしょう。

要するに、良い医者の評価もやや主観的なきらいがあり、ひと言で言ってしまえば、「自分の求めるものに合致しているものを提供してくれる医師」と考えることも出来るのではないでしょうか。

 

結果で臨床力を測定できるか?

患者さんを診療する能力を臨床(能)力と呼びます。

この臨床力を図るのも、実に難しいものです。

例えば、結果で測定するのはどうでしょうか?

A医師は、100人の苦痛がある患者さんのうち50人を緩和した。

B医師は、100人の苦痛がある患者さんのうち90人を緩和した。

これだけを見ると、A医師よりもB医師が優れているように見えます。

ただ上記の情報で、本当にそのようなことが言えるでしょうか?

例えば、A医師は、末期がんの苦痛が強い患者さんばかりを診ている医師であり、B医師はもっぱら風邪などの患者さんを中心に診ている医師だったらどうでしょうか?

そう、診ている患者さんの層によっても、診療の成績は変わります。

重い容体の患者さんばかり引き受けている医師は、それよりも軽い容体の患者さんを引き受けている医師よりも、治療の見た目の成績は悪くなる可能性が高いです。

全く同じ患者さんを同じ時期に診療したならば、結果がどうか、で判断はできると思いますが、それができないことは皆さんもおわかりのことと思います。

 

研究やメディア露出と異なり評価しにくい臨床力

また、患者さんを診る能力は、論文の数や、研究に秀でているとか、メディアによく出ているから、ということでは図れません。

判断するのが難しい臨床力と比較して、論文や研究、メディア露出は評価しやすいですから、「名医」を紹介する本にもしばしば、そのような評価しやすい側面である研究やメディア露出の多さからの人選が為されています。

また教授という立場も、しばしば、臨床能力よりも研究能力等に対して付与されるものであり、臨床能力の高さを保証はしません。

こうやって考えると、実に臨床能力の評価が難しい、ということがわかるのではないかと思います。

さらに、診療分野も細分化されており、お互いの専門分野の実力を評価することは極めて困難になっています。

例えば私は手術をしませんから、外科医の手術能力に関して誰が高いかはわかりません。

実際に手術室に入って、他の術者と比較して(そしてある程度手術の手順等について自分も理解がないと)評価できないためです。

私の専門と同じ緩和医療に関しても、一緒に働かないと正確な評価はできません。

臨床能力の評価の難しさ、わかっていただけたでしょうか?

 

それでもなお臨床力は、受け手にとって重要

しかしそれでもなお、このサイトでは、臨床力という点にこだわりを持っています。

それは、患者さんを診る本当の実力がある医師にかかるのが、一般的には患者さんや御家族にとって幸せなのではないかという思いがあるためです。

実際、医師の力量の違いによって、運命のターニングポイントを迎えることがないとは言い難いです。

臨床能力ある医師の手にかかれば問題にすらならなかったことが、そうではない医師の手にかかり後手後手になってしまって、問題が極大化する―そのようなことがあるのは厳然たる事実です。

また接し方や言葉によっても、患者さんの気持ちやモチベーション、ストレスが変わってくることは言うまでもありません。

厳然と、臨床が良い医師もいれば、残念ながらそうではない存在もいます。

ただこれまで述べて来たように、このサイトで掲載している医療機関の医師のことは、知ってはいても、実際に一緒に同じ施設で働いたわけではないので、評価には限界があります。

 

名医本に私の知る良い医師が掲載されていない!

それでも、私は以前から、名医を紹介する本に、私が知っている優れた臨床家が挙がっていないことに驚きを感じています。

いかに臨床ではなく、研究などでの実績を中心に選ばれているか、と痛感します。

もちろん研究なども未来の医学のためにとても重要ですが、実際に診てもらって良いことが多いのは、臨床能力の高い医師です。

私も、私が評価できない他の専門分野の医師に自らの運命を何度か委ねましたが、これまで満足のいく結果を得てきました。

ただ概ね重要と言われていることは、やはり、症例数の多さです。診ていない人よりも、診ている人のほうが相対的に信頼度は高いです。

いずれにせよ、臨床以外で有名というわけではないかどうか、研究やメディア由来での高名さではないか、等を分析したうえで、真なる良き臨床家をここでは紹介していきたいと存じます。

 

Posted by 大津 秀一